さぼうるの店主

 こんにちは、ゆらです。
今回はめずらしく、何年たっても忘れられない喫茶店の話を。

 さて、その喫茶店「さぼうる」がある神保町は有名な古書店街であり、このあたりを歩いていると、本の持つ独特な雰囲気や香りに誘われて、つい古本屋に飛び込んでしまうことがある。
 学生街でもあり、じっくりと本屋を歩きまわることを考えたりすると、腹にためやすいカレーは流行るだろうし、定食屋の数も多い。有名なチェーンレストランでは、編集者と作家が、何時間もおかわり自由のコーヒーをすすって作品について話すという姿もある。本がどっしりと中心にあり、そこにまつわる人や知識を求める人が着て、そうして誰かと語らいたいという人たちが、この街をぐるりぐるりと囲んでいる。
 
さてそんな有名な喫茶店が集う神保町で、ことさら有名な喫茶店がある。
さぼうるだ。この喫茶店は開店してから60年は経っていて、おじいさんとしか言えないような老店主が店を切り盛りしている。いつもお客さんの見える位置にいて、従業員に指示をするこの店主は本当にこの店を大切にしているのだと感じる。
 トーテムポールの見える店外、やや暗めの照明に照らされる、木のテーブル、落書きやサインが書き込まれて下の素材がよく分からなくなった壁。
 そこで飲む珈琲は格別だと思う。なぜ思うなのか。私は珈琲が苦手で飲めない。
 ココアの甘さで、疲れた心や体を癒している。本当に一口一口が贅沢と思えるほど、ここで味わう時間は格別だ。
 この喫茶店で味わう雰囲気や空気は言葉にしがたい穏やかさがある。優しくてまろやかで、ここで疲れてぼぉとしているのもいいし、誰かと語らうのもいいだろう。もちろん本の街だから新聞や本を読む人もいる、柔らかな照明の下で好きな人の顔を見るのもなかなか楽しいのではないだろうか。

 この店主は店が休みである日曜日でも、見かけたことがある。
 ある記事で店の2階で休むと書いていたので、きっと何か用事があって、休日でもカーテンの奥で作業しているのだろうかと思う。
 本当に店主の店への献身には胸にくるものがある。でも店主からすればそれはあまりに当たり前のことなのだろう。大切にしたいものを大切にする。今では難しくなったかもしれない、続けるという姿勢に頭がさがるばかりだ。

 さて最近私は神保町に行く機会はめっきりないが……。
 今度行ったら、苦手だけれども珈琲を飲んで、あの店の時間を、じっくりと味わってみたい。
きっとその時間は何度も振りかえりたくなるような、微笑みたくなるような、そんな時間になるだろう。