帰り花

 こんにちはわりとすぐに帰ってきました。ゆらです。
皆さんは帰り花という言葉をご存知ですか。冬の初頭に小春日和に咲く季節外れの花のことを指します。つまりはその後の冷えが来れば、あっという間に枯れてしまう儚い、寂しい花です。
 というわけで、今日はこれにまつわる小話(創作)を一つ。

 私は季節の外れに咲く花が憐れでした。
何故かといえば、この花は季節外れに咲いたがためにその場一瞬、美しい姿を見せて、枯れてしまうのです。きれいな黄色な花を見せても私は心を温まりません。この花は何も成せない花なのだと思うと私の心はずきりと傷んでしまうのです。
 私は病気で体力が少なく、あまり働けません。だから普通の人のように、社会が望むような安打を量産し続ける人間にはなれません。命として大人になり花は咲かせましたが、どんなことでも実をつけられないような気がしてました。だから帰り花が好きではありません。見ると思わず目をそらしてしまいます。
帰り花は私の仲間です。見たくない友達です。
ある年の冬のはじめです。
 私は人と一緒に歩いていました。
私はその人のことを好きでした。そうしてその人も私を好きだと言ってくれました。
 憂鬱なことが多いけれど、その人といるとめまいがしそうな現実でも頑張れる気がしたのです。
 その日は楽しい日のはずでした。でも寄った公園で私は紅く咲く帰り花を見つけてしまいました。
ーー季節外れなのに、珍しい。
 その人が目を丸くしているのを黙って私は見ていました。嫌なものを見てしまったと思います。その人は私の顔を見て怪訝な顔をするので、私はその花が帰り花であり、何も成せない花だから好きではないと伝えました。自分とよく似ていて嫌いということは伏せたのに、その人は何かを察したような顔をして私はその察しの良さが少し嫌いですと思いました。
 その人は私の腕を引いて、帰り花の元に連れて行きます。そうして私を花と一緒にして、カメラで一枚写真を撮りました。
 私が目を見開いていると、彼は言いました。
ーーこれで帰り花も意味を持てたよ。成すことが出来た。
ーー何を、言って。
ーー君との思い出のづくりの役に立てたよ。
 きっとこの写真のために、咲いてくれたのかなぁとのんきに言うのが恥ずかしいやら、癪でしょうがなくて、私は肩をいからせました。
「馬鹿なことを言って! 帰り花は何も成せない私みたいな女の花なのに」
 すると彼は真面目に言いました。
「何かを成すなんて人それぞれの解釈次第だ。俺からすればこの花は充分に成したと思うよ」
 だからそんなに不安にならなくていいんだよ、君だって。
「必ず何かを成せる花になるよ」

 その人は写真を私に見せた。紅く咲いた花と、戸惑い目を大きくする私が、きれいに写っている。私は顔を伏せた。花はこの日だけの命なのに、幸せだったのが伝わる。私は唇を噛み締め、信じたい希望となった花の姿を、いつまでも見ていた。